私の実家は代々続く庄屋なこともあり、結婚相手には婿入りしてもらうことが条件でした。

そのため、私が交際相手に選ぶのはいつも次男で人当たりのいい男性ばかりです。

私が彼と出会ったのは、実家が経営する店舗でした。

頻繁に訪れる彼とスタッフとして働いていた私は、彼と少しずつ打ち解けていき交際をスタート。翌年には結婚しました。幸いにも彼は一家の次男で、私の家の商品をとても愛してくれていたので両親やスタッフからの評判もよく、この人とならも幸せな家庭を築けると思っていました。

結婚後、彼はそれまで勤めていた仕事を辞め、家業を継ぐために実家の手伝いをしてもらうことになりました。現場に慣れるまでは私と母が交互に付き添って仕事を教えていました。店には私や両親の他は年配の女性従業員の方々だけの少人数で運営していたこともあり、彼もすぐに現場に馴染んでいきました。家に帰ってもそれは変わらず、私の両親とも上手く折り合いをつけてくれているようで、順調に結婚生活を送れていると思っていました。

結婚して半年が経った頃でしょうか。夫の様子に異変がみられるようになりました。

以前は起こさないと起きないほど朝が弱かった彼が、毎朝私よりも早く起き、母と一緒にお茶をしたり食事を作ったりしているのです。それも一度や二度ではありません。どういった心境の変化なのか尋ねてみても、笑ってはぐらかされてしまいます。

その後も、疑問に思う瞬間は多々ありました。仕事上気になる点などがあれば、私か母に尋ねるよう伝えていましたが、母のほうにばかり声をかけます。喧嘩をしているわけではないし、2人の時は普通に会話もするのですが、どこか余所余所しいのです。夜を一緒に過ごす機会も段々と減っていきました。

母にこのことを相談してみても気にしすぎだと言われますが、一度気になってしまうとどうしようもなく、家族や従業員の方には内緒で、東京興信所に頼んで、家や店舗の至る所に盗聴器とカメラを仕掛けてもらいました。相手に浮気を問い詰める時は、その確証たる証拠を揃えておくといいと知人から聞いていたので、しばらくの間調べさせてもらいました。

盗聴機器をセットし終えてからしばらくして、夫も両親も外出して私しかいない日を狙って機器類を全て取り外し、録音されているはずの内容を確認しました。盗聴器は、つけ方が悪かったのか所々ノイズが入って聞こえが悪く、浮気を感じさせる様子が分かりませんでしたが、カメラはしっかりと証拠を押さえていました。

最初にカメラに映し出されていたのは、まだみんなが寝静まっている早朝に家のリビングで何度もキスをしあう姿でした。その後も二人至る所で接触し、体の関係まであるようでした。一番きつかったのは、店を抜け出し昼休憩中に私たち夫婦の寝室で事に及んでいたことでした。とても信じられない内容でしたが、何度見ても夫と私の母がそこには映っていました。

私はその日の晩、家族がそろった時を狙いこの映像を見てもらいました。

自宅を移している映像を見て、夫と母は顔を青ざめすぐに映像を止めようとしました。その行動を不審に思った父がそのまま映像を流すよう強く言いつけたために、映像は再度流れ始めました。

映像が進むごとに夫は顔を青ざめ、母は号泣し、父は怒りで顔を真っ赤にしていました。

私はそれを第三者の如く見つめながら、この先の父の行動を見ていました。父は案の定、夫を殴り、母を罵倒し、2人は私と父に向って土下座までしていました。

何故、こんなことになったのかと聞くと二人は一目惚れだというのです。お互いに結婚し、相手もいるのに今更一目惚れなんてするとは思わなかったが、どうしても諦めきれなかった。お互い今の相手(母なら父と、夫なら私と)と別れる気はなく、このまま家族でありたいと。そんな自分たちの都合のいい環境を裏切られた私たちが許すはずもなく、父は怒りで興奮状態のまま怒鳴り散らしました。

私の言い分まで言ってくれたおかげで、私は今、こうして書き留めることができるのだと思います。

結局私たち夫婦は離婚し、両親とは別居することになりました。

両親は、老後のこともあるので離婚はしませんでしたが距離を置くようになったそうです。今思うと、彼が私と結婚したのも、母に近づくためだったのかと思えてしまいどうにもやるせない気持ちになっています。結婚とは恐ろしいものだなと、身を以て学びました。